【解説】ペインテッドホール・旧王立海軍学校へ行ってみよう

当サイト一押しの観光地でもある世界遺産サイト「マリタイム・グリニッジ」。

この記事ではマリタイム・グリニッジにある「ペインテッドホール」を中心に、旧王立海軍学校を観光する際に知っておきたい歴史や見どころを詳しく解説しています。

1. 旧王立海軍学校とは?

対岸から見た旧王立海軍学校の建物

英語表記:Old Royal Naval College
設計:クリストファー・レン(1632 – 1723)

旧王立海軍学校は、ロンドン南東部のユネスコの世界遺産サイト「マリタイム グリニッジ」内にある歴史的建造物です。 

ツインドームが特徴的な左右対称の建物内には、グリニッジ大学やトリニティ・ラバン(音楽とダンスの学校)のキャンパスやチャペルがあり、中でも修復後2019年に一般公開された「ペインテッドホール」は、トリップアドバイザーのトラベラーズチョイスなどを受賞する観光スポットとして多くの観光客が訪れます。

映画のロケ地としても有名な場所で、これまでに「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉 (2011)」、「レ・ミゼラブル (2012)」、「マイティー・ソー (2011)」、「007スカイフォール (2012)」 などの撮影で使用されました。

次の項目では、訪問前に知っておくと現地での滞在がより一層楽しめる、旧王立海軍学校の歴史について観光情報を盛り込みなら解説しています。

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2. 訪問前に知っておきたい旧王立海軍学校の歴史

オールドロイヤルネイヴァルカレッジの全体図

英国王室と海軍病院の建設

現在の建物が完成したのは1694年のこと。

建造前は、1498年より王族の住まいであった「プラセンティア宮殿」があり、チューダー期の最も重要な宮殿の一つでした。

プラセンティア宮殿は、英国史において最も有名な国王とも言える「ヘンリー8世」や「エリザベス1世」の生誕地でもあります。

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プランセンティア宮殿の名残はペインテッドホールのある建物内で見ることができ、敷地内にあるビジターセンターには当時の考古学的遺物が展示されています。

内乱(1642年–1651年)により破壊されたプラセンティア宮殿の跡地には、当時の国王であった「メアリー2世」の命により「負傷した海軍兵の為の病院」兼「退役した海軍兵の住居」の役目を担うRoyal Hospital for Seamenが建設されることとなりましたが、当時、民衆からの支持や関心、寄付金を必要としていたことや、英国の富やパワーを外国へアピールするためなど、建物の建設には様々な思惑があったと言われています。 

建物の設計を任されたのは、当時、セントポール大聖堂を手掛けていた英国を代表する建築家「クリストファー・レン」です。
レンは「クイーンズハウス」を中央に見据えたツインドームのシンメトリーの建物を設計しました。

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建物全体を見るには、対岸にある「アイランド・ガーデンズ」へ行くのがおすすめです。カティサークのそばにある「歩道トンネル」 (Greenwich Foot Tunnel) でアクセスできます。

当時、レンはセントポール大聖堂の建築で多忙だったことから、彼の優秀な右腕であった「ニコラス・ホークスムア」が、海軍病院の詳細な設計を担当したといわれています。

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ホークスムアは、同じくグリニッジにある「セント・アルフェッジ教会」をはじめ、ロンドンにある6つの教会のデザインをした建築家としても名を残しています。

いよいよ着工となる2年前の1694年、元海軍兵のための施設 – Royal Hospital of Seamen建設を望んだメアリー2世は天然痘に侵され、32歳の若さでこの世を去ることに。 

メアリーの意思を引き継いだのはメアリー2世の最愛の夫であった「ウィリアム3世」でしたが、1696年に建物の基礎がつくられてからまもなく、肺炎を患ったウィリアム3世も病院の完成を見届けることなく、1701年にこの世を去ることとなるのでした。 

その後「Painted Hall」となる建物は1704年に建設が終わり、ホールの壁画が英国人画家「ジェームズ・ソーンヒル」へと引き継がれることとなります。 

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ソーンヒルとペインテッドホール

ペインテッドホールの壁画(天井画)を仕上げる重大な任務を任された 「ジェームズ・ソーンヒル」は当時若手の画家でしたが、民衆の愛国心を煽るため「プロテスタントの英国人」であるソーンヒルが選ばれたと言われています。 

ホールのデコレーションは1707年に始まりましたが、高さ18メートル、3700平方メートルの天井に直接描く(壁画)という壮大なプロジェクトは完成までに19年もの歳月が費やされました。

ソーンヒルはこのおお仕事をきっかけにナイトの称号が与えられ、セントポール大聖堂の壁画も任されることとなりました。

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ペインテッドホールの壁画には、英国の歴史や大航海時代の英国の富とパワーが表現されており、およそ200人もの人物が描かれています。その中には、メアリー女王とウィリアム王をはじめ、ギリシャ神話に登場する神々、天文学者ジョン・フラムスティード、そして、ジェームズ・ソーンヒル自身も描かれています。

さて、天井画の作成に膨大な年月を費やしたペインテッドホールですが、もともとこの部屋は入居者用(元海軍兵)のためのダイニングルームとして造られました。

ソーンヒルのプロジェクトが始まる以前にすでに居住者がいましたが、天井画の完成後は民衆に一般公開されるなどされていたため、入居者がダイニングルームとして使用できるようになったのはかなり後になってからのことだったのだそうな。

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元海軍兵の入居者とその生活

最初の退役海軍兵が施設(Royal Hospital for Seamen)に入居し始めたのは、建物の建設が始まってから9年後の1705年のこと。 

当時はまだ全ての建物が未完成の状態で、いわば「工事現場」のような場所での生活だったと思われますが、退役軍人にとって、食べ物や衣類、住む場所が提供されるという待遇はとても魅力的だったことから入居希望者は後を絶たず、多くが共同生活を送っていたのだそうな。 

「リタイヤした海軍兵」と言っても年齢は様々で、わずか12歳の少年も入居していたと言われています。また、英国出身者だけでなく、カリブや北アメリカ、アフリカ、そしてアジアからの退職者も受け入れていたとのこと。 

時が経ち1860年頃になると、施設で生活をするよりも年金をもらい、外のコミュニティーで生活することを望む入居者が増えていったのだそうな。
その理由として、院内では家族と一緒に住めないことや結婚禁止という厳しい規則が背景にあった模様です。

1869年、Royal Hospital for Seamenは閉院となります。

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海軍兵学校の誕生と移転 

「Royal Hospital for Seamen」が閉院となってから4年後の1873年、建物は「ロイヤル・ネイヴァル・カレッジ」として、英国海軍の士官を育成する学校として生まれ変わります。 

第二次世界大戦中には多くの士官のトレーニング場としての役目を果たし、およそ2万7千人もの士官生がこの大学を卒業したと言われています。

1998年、ロイヤル・ネイヴァル・カレッジはサウスデヴォン州のダートマスに移転。

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3. 見どころの施設 


ここからは、旧王立海軍学校の見どころや立ち寄ってみたい施設を紹介していますが、敷地が広くわかりにくいため、観光時は↑マップも参考に散策を楽しんでください。

ペインテッドホールとチケット予約

ペインテッドホール
ペインテッドホール

ペインテッドホールを見学する際は、入場料に含まれる「日本語のマルチメディア端末」で天井画の詳細解説を含むガイドを聞くことができます。

ホール中央に並ぶベンチソファに仰向けになり、ゆっくり天井壁画を楽しみましょう。

奥の壁画に描かれているジェームズ・ソーンヒルもお見逃しなく!

ペインテッドホールの入場チケットには、改築工事の際に発見された「プラセンティア宮殿のセラー」や「元海軍兵が退屈しのぎに利用されていたボーリング場 (Skittle Alley)」の見学なども含まれます。

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ボーリングの球には船に積まれていた「大砲」が使用されていたそうで、スタッフがいれば実際に球を投げさせてくれることもあります。

【ペインテッドホールのチケット予約】
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チャペルの見学

ペインティドホールの隣にあるチャペルの中

ペインテッドホールの隣の建物にあるチャペルは、正式名称を「The Chapel of St Peter and St Paul」といいます。 

旧王立海軍学校の建物の中でも最後に建築されたもので、完成したのはペインテッドホールが建築されてから48年後の1752年の事。

チャペルはクリストファー レンの設計に沿い「トーマス・リプリー」によって建てられましたが、1779年の火事により大きなダメージを受けたことから、現在見られるチャペルは、1789年に「ジェームズ・スチュワート」によって改装された「グリーク・リバイバルスタイル」の内装となります。

水色とクリーム色を基調とした内装は、天井の装飾や白と黒の大理石の床、17世紀のパイプオルガン (The Samuel Green Organ) が見どころ。

【入場見学】無料
【オープン】:毎日10am – 5pm 

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ビジターセンターの展示

グリニッジのツーリストインフォメーションセンター

カティサークのそばに位置するビジターセンターでは、オリジナルグッズやガイドブックの販売をはじめ、プラセンティア宮殿の考古学的遺物の展示物や海軍兵のユニフォーム、建物の模型などが展示されています。 

案内所 (Information desk)では、グリニッジを観光する際に役立つ地図など入手可。

【オープン】毎日10:00am – 5:00pm

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レストラン&カフェ

旧王立海軍学校敷地内にあるOld Brewery Pubの外の席に座る人々

パブ The Old Brewery

ビジターセンターと同じ建物内にあるガストロパブ「The Old Brewery」では、美味しい英国料理の数々の他、地元グリニッジの醸造所「Meantime」で造られたビールが味わえおすすめです。

緑あふれる外の席も沢山あり、ゆったりとした雰囲気の中で食事が楽しめます。 

外で食事をする際には、バーカウンターで注文&支払い。その際、テーブルの番号が必要となるので、先にテーブルを確保しておきましょう。

Painted Hall Cafe

ペインテッドホールの建物内「Undercroft」にあるカフェで、サンドイッチやサラダなどの軽食をはじめ、ケーキやコーヒー、紅茶などが楽しめます。 

ピクニック

敷地内には広々とした芝生のエリアやベンチもあるので、グリニッジマーケットで買ったランチやデザートをテイクアウトして「のんびりピクニック」というのも素敵な過ごし方かもしれません。

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4. グリニッジへのアクセス

グリニッジのボード乗り場

ロンドン中心地から南東に位置するグリニッジまでのアクセス方法は様々ありますが、お天気が良ければ、観光クルーズ船の利用が一番オススメです。

観光クルーズ以外の交通手段には、DLR (Cutty Sark駅)やロンドンバスケーブルカーがあります。

世界遺産のマリタイムグリニッジには見どころが沢山あるので、一日たっぷり楽しんでくださいね。


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